2013年12月号 ToDoリストを動詞で
メールがリストだった
スーパーに食料を買いに行くとき、買うものを書いたメモを持参する。これがないと、きっと何か買い忘れて、再度買い物に出かけることになる。
仕事でもやることリストは重宝だ。原則としてメールの返信などはその場で対応して終らせ、メールは「command」+「control」+「A」キーでアーカイブしてしまうが、それ以上の時間を要する作業が発生するメールはアーカイブせず、後回しにする。
メールをそのように扱うと、メールアプリ自体がやることリストとして機能する。メールアプリを見れば、やり残していることが見える。仕事を完了したらそのメールをアーカイブすることで、リストの項目を減らすという使い方だ。
しかし、近年、メールの利用が劇的に減った。ChatWork、iMessage、Twitterのダイレクトメッセージ、Facebookのメッセージといった各種のメッセージシステムが仕事のやり取りの主流になったからだ。もうメールを連絡手段に使う仕事は圧倒的に少ない。
特に、ChatWorkを使い始めて以来、日常的な文字会話の手段はChatWorkが半分以上を占めている。メールを書くには、どこか形式張った体裁を要する。相手の名前から書き始め、当たり障りのない挨拶をし、要件を書き、丁寧にお願いをする。そのやり取りには過去のメールが引用される。引用の繰り返しを引きずって肥大化するメールで連絡を取り合うのは、無駄だし、読みにくい。
メッセージシステムを使えば、必要最少限のことだけを書けば済む。やりとりの相手が定まっているから、相手の名前を書く必要もないし、余計な挨拶も不要。仕事が加速するのだ。
すべてがメールに集約されていた時代には、どんな案件でもメールで送っておけばよかった。ときには事務スタッフに、「申し訳ないけど、この件、私にメールしておいていただけますか?」と依頼し、メールのリストに加えることもあった。
しかしメールが業務の中心ではなくなった現在、それも意味をなさない。そもそも昨今のメールは、仕事以外の情報が多すぎる。私が一日に受けるメールで最も頻度が高いのは、日経新聞や関連会社からのものだ。新聞記事の見出しリストや設定してある検索語に該当する記事のリストが送られてくるから、これはこれで有益である。その他にもスパムではない各種の広告、プレスリリースといった、自分の仕事には直接関係のないメールがほとんどだ。もはやメールをやることリスト代わりには使えないのである。いつの間にかメールの時代は終焉を迎えたのだ。
リストは専用に
メールを使わない今、やることリストが必要ならほかに用意すべきだ。本来メールは通信手段であって、それをやることリストに流用していたのだ。リストはリストとして専用環境を用いるほうがいい。
メールで届いた仕事を後回しにするために、そのメールをアーカイブせずに置いたところで、メールアプリ自体を見る、あるいは起動する機会が少ないから、その仕事を放置してしまう可能性が高い。仕事が発生したらやることリストに書いてしまうことが大切だ。その仕事の存在をいったん忘れて、別の仕事に集中できるからだ。
そのようなリストでもっとも原始的なのは、メモ用紙に書き出す方法。買い物メモはまさにそれだ。小さいメモ用紙に書き出してポケットに入れるのもいいし、私はコクヨ「測量野帳」(セ-Y3・スケッチブック)をそのように使うこともある。
また、ポストイットなどの付箋紙を使っている人も多い。私は昔から付箋紙をまったく使っていないが、付箋紙を多彩に使って、仕事を片付ける人にとって、付箋紙は万能である。Macのモニターにたくさんの付箋紙が張り付けられているのは、よく見る光景だ。
Mac/iPhone/iPadなら純正アプリとしても「リマインダー」がある。従来のカレンダーアプリ「iCal」から、やることリスト機能を独立させたものだ。ほかにも、同種のアプリはいくつもある。
しかし私はこの手のいわゆる「To半アキDoリスト」アプリをなかなか上手く使いこなせない。だいたい、ここに書いておくのを忘れてしまう。だからそのリストを見ても、他にもっと重要な仕事がありそうで不安。書かない、見ないの悪循環を経て、次第に使わなくなってしまうのだ。
ToDoリストを生かす方法
たぶん何か間違っている。いくつかのTo Doリストアプリを使ってみては次第に使わなくなってしまう自分を顧みて、疑問を持ち続けた。たぶん、どこか自分の使い方に問題があるに違いない。
1年ほど前に使っていた「Wunderlist(ワンダーリスト)」というアプリが最近、ずいぶんと進化している。再度使ってみることにした。
リストには項目名がある。私は従来、「成蹊大学」、「SFC」、「政策研究大学院」、「写真」、「その他業務」、「原稿」、「作業」、「教育」、「本」、「レストラン」、「家族」、「プライベイト」といった項目を立てていた。
それぞれ分類は明確だから、タスクが発生したら書き込む項目に迷いはない。なのに、次第に書かなくなってしまう。なぜだろう。
あるとき、リストを見ていてふと思い至った。これは「to do」リストなのだと。
項目名が名詞なのはおかしい。「to do」なのだから、動詞にすべきだ。そこで、何を「やる」のかを考え、すべての項目名を英語の動詞に書き換えた。
英語の語順は「 I do something.」である。「私+動詞+やること」の順だ。だから、やるべきことが「something」なら、その前に来る項目名は動詞であるべきなのだ。気づいてみれば、「to do」リストなのだから、当然である。
その結果、現在の項目名は次のとおり、英語の動詞に統一した。主な項目を、内容の解説とともに列挙しよう。
「think」は、考えるべき研究上の課題や疑問。「blog」は、ブログに書こうと思いついたトピック。「write」は、執筆予定の原稿。「hand」は、作成して提出すべき書類など。「handle」は、送付するなど扱うもの。「produce」は、書籍など大きな製作物。「contact」は、連絡する相手や内容。「eat」は、食べたい料理や行きたいレストラン。「read」は、読みたい本など。「visit」は、行きたい場所。「buy」は、買い物。「pay」は、支払い。
半年たった。過去、最も長期に利用している。人生はdoの連続なのである。
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画像キャプション
デジタル中心な生活だからこそ万年筆で手書きする時間を大切にする。長年愛用しているコクヨ「測量野帳」(セ-Y3・スケッチブック)に万年筆で書いていると頭が整理されていく
Wunderlistの基本的なインターフェース。画面右側の「サブタスク」は、買い物に行くときの買う物リストに使っている。無料アカウントだと上限25個
WunderlistはMac/iPhone/iPadで同期される。その安心感もTo Doリストアプリの大切な要素だ